第1章 パーティー
部屋にも入らず、ドレスだけ廊下に置くと、母は行ってしまった。
「わかりました。」
どうせ聞いていないだろう。そう思いながらも返事をしておいた。今夜、ファントムハイヴ伯爵のパーティーに行く。そこと契約をすれば、利益も上がるし、ヘンリー社の売上も上がり、有名になり、大儲け。
それが目的で今回のパーティーに参加するらしい。招待状を頂いたこの機会を逃すわけにはいかない、と姉に全てを託し、私を引き立て役として連れて行くことを決めたらしい。
「…」
白い、シンプルなドレスだった。柄なんてものはなく、胸元に小さな宝石が付いているだけだった。
「行ってきます、お父様、お母様。」
「行ってきます…。」(行きたくない…。)
「行ってらっしゃい、ソフィア。」
「気をつけるんだぞ、ソフィア。」
「はい!」
私のことなんか眼中にない。というような口調で、送り出した両親。そのあとが苦痛だった。姉と2人きりの馬車の中。
「はぁ…なんでアンタなんかと同じ空間にいなくちゃいけないのかしら。地味なドレスね。」
そう言い、姉は足を組んだ。何も言わなかった。言ったところで何も変わらない。
ファントムハイヴ邸に着いた。パーティーはもう始まっていた。早速、姉は伯爵に近づいた。タイミングが良く、伯爵は誰とも話していなかった。
「初めまして、ファントムハイヴ伯爵。今夜はお招きいただき、ありがとうございます。」
「!…初めまして。いえいえ、ぜひ、パーティーを楽しんでください。」
いきなり声をかけたから、驚いたのか、目を見開いた伯爵。でも、すぐに表情は戻り、姉に挨拶をした伯爵。身長が小さかった。まだ幼い顔だった。