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お気に入り 【黒執事】

第3章 2人


泣き止んだ男の子。温室の中を見ると、薔薇が枯れていた。


「どうしたんですか…?」


メイド服に付いた土などを払いながら聞いた。


「実は……。」


その男の子の話によると、薔薇が咲きそうだったので、植物成長調整剤をかけようとしたら、間違えて除草剤をかけてしまったのだという。


「何やってるんですか…。」

「ふぇぇっ……と、ところであなたは誰ですか?」

「今頃ですか…。」

「あ!僕はフィニアンといいます!えっと…。」

「ナツキです。坊ちゃんに今日から雇われているんです。」

「そうだったんですね!」

「はい。」


と…こんなところで雑談をしているわけにはいかない。今日は食事会があるのだそうだ。枯れた薔薇なんかを見せるわけには行かない。


「…どうしよう…。」

「ご、ゴメンなさい…僕のせいで…。」

「…うーん…。」

「僕、セバスチャンさんを呼んできます。」

「いえ、待ってください。」


私はフィニを止めた。


「えっ?」

「もうこの花はどうにもなりません。セバスチャンさんを呼んだところで、何も変わりません。」

「そ、そうですよね…。」

「とりあえずこの花を全部外に出しましょうか。手伝っていただけますか?」

「!…はい!」


それから……花を全部出し終わった。


「それじゃあ、あとはこの花の片付けをお願いします。」

「はい!」

「あ、それから…敬語は…使わなくていいです。」

「え…で、でも…。」

「いいんです。慣れてないので…。」

「…わかった!」


私は少しだけ庭を見ていくことにした。


「…綺麗…。」


全てセバスチャンが手入れしているのだと思うと凄いと思った。あの2人の使用人を見た限りだと、ほぼ1人でやっているようなもの。


「…」

「気に入ったのか?」

「!…坊ちゃん…。」


背後から声が聞こえ、急いで振り向いた。


「は、はい…。坊ちゃん…お仕事は…?」

「終わった。」

「!…」(あの大量の書類の山が…?)
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