第3章 2人
シエルがイライラしているようにも見える。
「あっ…。」(セバスチャンさんが…確か…。)
「心当たりでもあるのか?」
「は、はい…。えっと…本当にその人なのかわからない…ですけど…。」
「誰だ?」
「私です。」
『!…』
2人同時に驚いた。いつの間にか部屋の入り口にセバスチャンが立っていた。ドアを開けて、ワゴンを押している。
「チッ…どういうつもりだ。」
シエルが舌打ちをして、セバスチャンに聞いても、セバスチャンは微笑むだけ。
「坊ちゃん、りんごとレーズンのディープパイをご用意いたしました。」
「…」
シエルはセバスチャンを睨みつけると、席に戻り、ディープパイを食べ始めた。まだ食べ終わっていないパフェにも手をつけている。
「それでは、私は仕事に戻りますね。」
「お前はなんなんだ?」
「え…?」
「なぜ、何も動揺しない。」
「……どう…よう……と、申しますと…?」
「はぁ……もういい…なんでもない。」
「…?は、はい。」
私は会釈をして、書斎を出た。
「…」(動揺って…してるに決まってるじゃん…。)
心の中でそう呟いて、仕事に戻った。温室の植物の手入れをしようと思った。
「うわはぁぁんっ!!」
「!…」
温室の中から泣き声が聞こえた。
「ど、どうし……うわっ…。」
「助けてくださぁぁい!!」
泣きながら私に抱きついてくる金髪の男の子。
「わわっ!?」
背中に地面をつけ、倒れてしまった。
「ふぇっ……ごっ、ゴメンなさい!!セバスチャンさんかと思って…!」