第20章 惹かれる
「…」
「はぁ…やっぱりアンタじゃ話にならないわね。」
猫被るのが疲れたのか、本性をあらわにしてきた。
ただ、二人とも慣れているので全く動じなかった。
「伯爵を呼んでくださるかしら?」
「すみませんが、伯爵は今手が離せない状態でして」
「だから、アンタじゃ話になんないから、伯爵呼んでって言ってるの。お客様が来るのに手が離せないってどういう状況なのかしら。」
「…申し訳ございません。」
「謝罪が聞きたいわけじゃないわ。で、ウチと契約結ぶの?結ばないの?結ばないんだったら、どうなるかわかってるわよね?」
「…どうなるんですか?」
「生意気なガキ……アンタみたいなのが1番嫌いよ。やっておしまい!!!」
そう言うと彼女はテーブルの下に隠れた。テーブルクロスで隠れて彼女の姿は見えなくなった。
でも、何も起こらなかった。
「…」
「…」
私はセバスチャンと顔を合わせた。私が首を傾げるとセバスチャンはニヤリと笑みを浮かべるのみ。
「どう…して…何も起こらないの……?」
恐る恐るテーブルの下から出てきた彼女。全身が震えていた。
「おかしいですねぇ?アルコールはお出ししていないはずなのですが…。」
笑みを浮かべるセバスチャン。
「…」(あぁ…なるほど…。)
きっと、殺し屋か何かを雇っていたのだろう。
「こちら、お返しいたします。」
しゃがんで彼女の目の前に掌を広げて見せたセバスチャン。そこには銃弾が3発あった。