第20章 惹かれる
「おう、じゃあ俺はこれで失礼するぜ。」
「うん。」
バルドが届けてくれた手紙。シエル宛てではなく、私宛てだった。
「…?」
差出人の名前はなかった。
「!…」
でも、内容を読めば、誰からなのかすぐにわかった。
「…」(アンダーテイカー。)
ナツキへ、元気にしているかい?小生はとっても暇だよぉ?最近君が来てくれなくてとても退屈だよぉ。でもきっと、来てくれないんじゃなくて、来れないんだろうねぇ。伯爵も独占欲が強いねぇ。久しぶりに手紙なんてものを書いたよぉ。早く君に会いたいよ。
会いたいよの後ろに形の崩れた♡マークがついていた。
「ふふっ…!」
思わず笑ってしまった。その時だった。またドアをノックされ、今度はセバスチャンがワゴンを押して入ってきた。
「お嬢様、ホットチョコレートをご用意いたしました。」
「あ、うん。ありがとう。」
「何か嬉しいことでもありましたか?」
「え?」
「いえ、笑っていらっしゃったので。」
「あ、うん。アンダーテイカーからね、手紙が来たの。」
「さようでございますか。」
セバスチャンがニコリと微笑んだ。