第19章 変わった執事
「…あの…ナツキ…さん…?」
「!…あ…え…えっと……伯爵と…私は…どこかで…お会いしたことが…ありますか…?」
「…」
「…記憶が…ないん…です…。」
「……前に何度か会ったことがあります。」
「やっぱり…。」
こっちのお屋敷の方が、なぜだか落ち着く。
「し…失礼しますだ…!わ、ワインの方を…!」
「!…」
「!…うわああぁっ!!」
メイドさんが入ってきた。でも、自分の靴紐を踏んで、盛大に転びそうになっていた。
「っ…!」
「…失礼いたしました。」
でも、執事さんがそのワインの瓶を見事に受け取り、メイドさんが転んだだけで済んだ。
「失礼いたします。」
執事さんが私のワイングラスに注いでくれた。
「…ありがとう…ございます…。」(悪い人じゃ…ない…のかな…?)
そう思った。
それに、あのメイドさん。花瓶の花を変える。と言った時の人の声にそっくりだった。
「…」
私は料理を口に運んだ。
「…」
「…」
沈黙が続いた。
「…ナツキ…さんは……その…何か覚えていることは…あるんですか…?」
「えっ……あ、いえ…何も…覚えていないんです…。」
「…どんな些細なことでも構いません。」
「……さっきの…メイドさんは……会うのが…初めてではないような気がするんです…。」