第19章 変わった執事
「…!お嬢様…。」
「…」
「ど、どうか…なさいましたか…?」
私の気配に気づいたのか、ハンナは要件を聞いてきた。でも、特に用があったわけではない。
「…なんも…ない…。」
「さ、さようでございますか…。」
ただ、花が見たかっただけ。
私は広い庭を歩いた。噴水があり、小鳥が鳴いている。
「…」
つまらない…。
この17年間、何もしないで過ごしていたとは思えない。両親は?友達は?
わからないことだらけ。
私は屋敷に戻り、書斎にある本棚のアルバムを取った。
「…だ…れ…?」
そこには、金髪の男の子が写っていた。
「…」
「お嬢様。」
「…この人は……誰…?」
「…その方は…アロイス・トランシー。お嬢様の……弟です。」
「…弟…?」
「はい。」
「…」
こんな人…知らない…。
「…ねぇ…シエル・ファントムハイヴのところへ…行きたい。」
「!……どうして…ですか…?」
「…何をしたのか…聞きたいの…。どうしても…思い出せないの…。」
「…何をおっしゃいます…!シエル・ファントムハイヴは、あなたの弟、アロイス・トランシーを殺し、あなたの家族も殺害し、村を滅ぼしたではありませんか…!」
「…」
クロードがどれだけ辛い過去を語っても、どうしても「悲しい」という感情がこみあがってこない。