第19章 変わった執事
「…さ、お嬢様、私と踊りましょうか。」
ニコリと微笑み、今度はセバスチャンが私の手をとって踊り始めた。
「!…あ…っ…。」
「大丈夫です。レッスンの時と、同じように。」
「…うん…!」
曲が流れているからか、ダンスを踊るのが楽しかった。自然と笑顔になっていた。
「お上手です。」
「ありがとう…!」
楽しい。
思ったことはそれだけだった。
それから……ダンスが終わり、シエルとセバスチャンは何かを話していた。アロイス達も同じ。
私はワインを片手にパーティー会場を眺めていると……
ガシャンッ…!
「!…」
「もっ…申し訳ございません…っ…!」
お腹のあたりが冷たくなった。見てみると、紫色の液体が付着していた。
どうやらメイドの人がおぼんをひっくり返してしまったらしい。長い銀髪と褐色の肌が印象的な人だった。
「…あ…だ、大丈夫です…。」
「本当に…申し訳ございません…。すぐに別のドレスをご用意いたします、こちらへ。」
「え…あっ…。」
腕を掴まれ、連れて行かれた個室。
「こちらを。」
「あ、ありがとう…ございます…。」
部屋には、ベッドと本棚、小さなテーブルとランタンがあった。
着替えている最中、メイドの人はドレスに付いたワインの染み抜きをしてくれていた。