第2章 新しい朝
シエルは階段を登って部屋に戻っていった。
「せ、セバスチャンさん…。」
「なんでしょうか?」
「ほ…本当に…ヘンリー家は……。」
「ええ。」
当然、といったような顔をした。
「…」
「…まるで、信じられない。といったようなお顔ですね。」
「あ…当たり前…です…。ヘンリー家は…私達の他にも…あと3家族…いるんです…。」
「ですから、そのお方達も、しっかりと滅ぼしましたよ?」
「っ…。」(絶対…嘘…。)
納得がいかなかった。こんな短時間でできるわけがない。それに、セバスチャンの服やフォーマル手袋には、血が全く付着していなかった。
「…ナツキ、私はこのあと、少しだけ時間があります。良かったら、見に行きますか?」
「!…」
セバスチャンの提案で、家に戻ることにした。馬車で向かった。
「…」
馬車の中で考えるばかりだった。本当に滅んでいたら、私は……どんなふうに思うのだろう。
「着きました。」
私は馬車から降りた。
「!…」
そこには、本当に何もなかった。ただの草原。
「…本当…に…。」
「ええ。」
私は、泣くわけでもなく、笑うわけでもなく、ただその場を見ていた。
「…坊ちゃんの命令で、このようなことをした。でも、ナツキのことは何も聞かなかった。よろしかったでしょうか?」
ところどころ、敬語が抜けている。
「…うん。」
「…」
それから、すぐにその場を去った。血痕1つ残っていなかったのは、凄いと思った。