第13章 戻った日常
「おやすみなさい、坊ちゃん。」
「どこへ行く?」
「え?」
「そばにいろ…。」
「…かしこまりました。」
近くにあった椅子に座り、シエルを見つめた。私に背を向けていた。
「…」
きっと、この人が私をそばに置いてくれる理由は……彼が小さい頃に、私がそばにいたから。それともう1つ…私が彼に似ているから。
「…」
しばらくして、シエルの寝息が聞こえた。よく眠っているようだった。私はろうそくの火を消し、シエルの部屋を出た。
「…」
「もうお戻りですか?」
「!…セバスチャンさん…。」
皆が寝静まったお屋敷に聞こえた声。
「…いえ。」
私がそう言うと、彼はニヤリと笑みを浮かべた。
彼の背中を追いかけた。
「…どうして…私を部屋に…?」
「決まってるでしょう?」
「え?あっ…!」
彼の部屋に入った瞬間、ベッドに押し倒された。
「あなたの体に、あのお方の匂いがついているので、それを消そうと思いまして…。」
「…」(セバスチャンの笑顔が怖い…。)
「それともう1つ。」
「…?」
「取られてしまったものを、上書き、するのです。」
「上書き?」
すると、セバスチャンはフォーマル手袋とネクタイをとった。
「あなたは、私のものです。」
「!…ち、違い…ます…私は」
「いえ。何も違いません。あなたは私のものです。」
「っ…。」
セバスチャンは私の唇にキスをした。舌を入れられ、ヌルリと動く2つのモノ。
まるで、キスの仕方が、獲物を喰らう獣のようだった。