第13章 戻った日常
「…」
足音を立てないよう、そっと部屋を出た。掃除も終わり、やることが無くなってしまった。セバスチャンに聞こうにも、アロイスやクロードの接待をしていて忙しいだろう。
「何か出来ることは…。」
探したけど見つからない。セバスチャンが全て終わらせていて、どこもかしこも完璧なのだ。
「…」
クロードに見つかるのが怖いので、私は庭へ行くことにした。
「…綺麗…。」
いつ見ても綺麗だった。
「本当に、綺麗ですね。」
「っ…!」(この声は…。)
背後から声が聞こえ、振り向くと…そこには…。
「ひぇっ…。」(や、やっぱり…。)
「お久しぶりです。」
眼鏡をかけた男性。クロードだった。
彼を避けて庭に来たのに…。
「お…お久しぶりです…ね…。」
精一杯の笑顔を作った。
「あ、アロイス様は…よろしいのですか…?」
「えぇ…。旦那様は今、シエル・ファントムハイヴとチェスをしておりますので。」
「…そ、そうだったんですか…。」(急いでこの人から離れないと…。)
今にでもクロードの瞳の色が悪魔の真っ赤な色に染まりそうだった。
「それでは…仕事がありますので、失礼します…。」
急いで戻ろうとした時だった。焦りは禁物だと、この時実感した。私は段差につまづいてしまい、転びそうになった。
「っ…!」
目を瞑ったけど、痛くなかった。恐る恐る目を開けると、クロードに抱きしめられていた。