第11章 ヘンリー家の生き残り
「そうだ!坊ちゃんにデザートを運ぶようにメイリンが頼まれてたんです!」
「メイリンが?」
「はい!」
「…」(心配だ。)
キッチンに戻ると、フラフラしたままトレイにデザートを運んでいるメイリンがいた。
「!…うわぁぁ!!!」
「!…あ、危ない…!!」
メイリンが派手に転んだ。トレイは私が受け取り、なんとか無事。
「大丈夫?」
「うぁぁあ!!ナツキ~!!」
「は、運べる?」
私が聞くと、半泣きで首を横に振った。
「じゃ、じゃあ、半分ずつ運ぼうか?」
「は、はいですだ!!」
パフェのようなものだけど、結構重みがある。
「し、失礼しますだ!」
メイリンが先頭。メイリンはシエルに出し、私はお客様に出す。
「…」
セバスチャンが私を見るなり、シエルにデザートを届け終わったメイリンにコソコソと聞いている。
「お待たせ致しました。」
「あら、綺麗ね。……あなたは?」
「!…こ、ここに雇われている使用人です。」
そのお客様は、茶髪に変わった姉、ソフィアにそっくりだった。でも瞳の色も違う。後ろ姿しか見てなかったので、わからなかった。
「ふぅん……綺麗な目ね?」
「!…あ、ありがとう…ございます…。それでは、失礼します。」
「あら、もう?伯爵、私、彼女と少しお話がしたいのですが。」
「申し訳ありませんが、彼女は彼女の仕事がありますので。」
シエルは間を空けることなく、即答で答えた。