第3章 来栖 龍之介・弐
(な、なんだ…?)
急に襲ってきた眩暈にも似た感覚。
そんなに度数の高い酒でも無いだろうに…
確かめるようにボトルへ視線を移す。
すると視界には、今まで見た事もないような笑みを浮かべる彼女の姿が映った。
「来栖さん、効いてきました?」
「…?」
「あなたのグラスにだけ睡眠薬を入れさせて頂きました」
「なっ…」
何だって…?
一瞬冗談かとも思ったが、この体の異変を思えばその言葉が冗談でない事は容易に理解出来る。
「安心して下さい…副作用はありませんから。…多分」
「っ…、一体どういうつもり…っ…」
「ふふ…目が覚めたら解りますよ。少しの間だけ…おやすみなさい…」
「…ん……」
次に目を覚ました時、俺は変わらずホテルのベッドルームにいた。
どうやらそのままベッドで寝かされていたらしい。
まだぼんやりする頭と気怠い体…
それでも何とか体を起こそうとした時、ようやく自分の置かれている状況に気付かされた。
「…!?」
ベッドの四隅に括り付けられている手足…おまけに俺は全裸だ。
両手首にも両足首にも縄のような物が巻かれ、それによって体の自由を奪われている。
「…ようやくお目覚めですか?」
「っ…」
そう顔を覗き込んできたのは勿論瑠璃子で…
「お、おい…!何だよコレ…!」
「とっても素敵な格好ですよ…来栖さん?」
「質問に答えろ!」
「この状況でもそんな口が聞けるなんて…ホント大した人」
「ぁっ…」
ピンッと乳首を指で弾かれ、思わず情けない声を出してしまう。
「今日で来栖さんとのエッチなお勉強も終わりにしようと思って……まぁこれは、謂わば"卒業試験"てやつですかね」
「…は……?」
話が全く見えない。
百歩譲って俺たちの関係が今日で終わりになるとしても、何故俺がこんな格好をさせられなければならないのか…
「来栖さんはずっと勘違いしてたと思うんですけど…」
「…?」
「私本当は…"超"が付くくらいSなんです」
「…!?」
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