第1章 野宮 暖人
それから俺は狂ったように彼女を抱いた。
何度も何度もその中に熱い白濁を放つ。
彼女は俺の想いも何もかも、全て受け止めてくれて…
「千代子さん…愛してる……」
「…私もよ」
「ん…、」
気が付くともう朝になっていた。
さすがにヤり過ぎたらしく、いつの間にか疲れて眠っていたようだ。
(…千代子さん……?)
隣に彼女の姿は無い。
あれだけ体を汚してしまったのだ、きっとシャワーでも浴びているのだろう…
寝惚けた頭でそんな呑気な事を考えていたが、バスルームからシャワーの音は聞こえてこない。
「………」
俺はそこでようやく胸騒ぎを覚えた。
部屋を見渡しても彼女の服や荷物は見当たらない。
寝ている俺に気を遣って、声も掛けずに帰ってしまったのだろうか…
けれど彼女が黙って帰った事は今まで一度も…
(…まさか……)
ベッドから出ると、テーブルの上に置いてあった1枚のメモが目に入った。
そのすぐ傍には、俺が昔彼女にプレゼントしたあのネックレスも置かれていて…
『ありがとう…さようなら』
メモにはその文字だけが並んでいた。
どういう意味なのか解らず、一瞬思考が停止する。
(さよう、なら…?)
「何だよ……これ…」
思わずそう声に出していた。
つい数時間前まで俺の腕の中にいた彼女。
その彼女が俺に何も告げず姿を消した…
(…嘘、だろ……)
『さようなら』って……『またね』って事だよな…?
俺はすぐに彼女の携帯に電話を掛けた。
けれど電源は切られていて…
(嘘だ…さよならなんて……)
だって彼女は俺の事を『愛してる』って…
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