第1章 野宮 暖人
「だったら…"浮気"を"本気"にしてみますか…?」
「…え……?」
気付けば俺はそんな事を口走っていた。
戸惑っている彼女の体を抱き上げ、寝室へ移動する。
「っ…、暖人…?」
「旦那とは別れて…俺と縒りを戻せばいいでしょう?」
「そ、そんな事…」
「出来ない」と告げられる前にその唇を乱暴に塞ぐ。
俺ももう限界を感じていたのかもしれない…彼女とのこの曖昧な関係に。
「ま、待って…今日はそういうつもりで来た訳じゃ…っ…」
「じゃあどういうつもりで来たんです…?」
「……、」
「ただ話を聞いてもらいたかっただけ…?やっぱり俺はいつまで経ってもあなたにとって"都合のイイ男"でしかないんですか?」
「ちがっ…」
初めは彼女に同情もしていた。
俺を捨てたのは本意でなかった事…
父親の会社の為に自分の身を犠牲にした事…
でもそれじゃあ、俺はどうなるんだ…?
このまま一生日の目を見ず、旦那の影に隠れて生きていけというのか…?
(そんなの御免だ…)
「…いい加減俺のものになって下さいよ」
「ゃっ…」
ブラウスのボタンを引きちぎる。
いつもと違う俺に怯える彼女を見ても、不思議と罪悪感は湧き上がってこなかった。
多分、俺はもう壊れていたのだ…
彼女と再会したあの日から…
「ま、待って暖人…!せめてゴムは…っ…」
「あなたは"俺のもの"なんですから、そんな物要らないでしょう?」
「ゃっ、あっ…!」
一気に彼女を貫く。
避妊をしないでセックスするのはこれが初めてだった。
「はッ…、く…っ…」
「ぁっ、ぁっん…!」
「ん…ッ…」
いつもと違う感覚に、すぐもっていかれそうになる。
こんな乱暴な事をしているのに興奮している俺は、いよいよヤバいのかもしれない。
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