第1章 灰色の蒼空
だって・・そんな風に思いでもしなきゃ
俺は一体どういう感情で和也に口付けしてるっていうんだ。
俺は和也からゆっくりと顔を離し
頬を紅潮させた和也を視界に捉えた。
N 「 あの・・ 翔さんは、いつもこういう事を・・? 」
顔を離して最初に発した言葉がそれ。
確かに、そういう事にしておいた方が
これから楽なのかもしれない。
後輩の緊張を解くためとか
酒に酔ったらキス魔になるとか。
在り来りな嘘を吐いていた方が
良かったのかもしれない・・・。
だけどこの時の俺は、そんな事が
頭から完全に抜け落ちていた。
S 「 違ぇよ・・ 誰にでもする訳じゃない 」
N 「 え、だったら・・ なんで 」
S 「 俺にも分かんねぇ・・ 多分暇潰しだよ 」
N 「 暇、潰し・・・ ? 」
S「 女に飽きただけ・・・ 男の割に綺麗な顔してたから 」
・・・ って何を言ってるんだろう。
そんなの、キスをされた和也に
失礼なんじゃないのか。
でも止まらない・・。
和也の蕩けたようなキスの顔。
合間に聞こえる微かな甘い吐息。
もっと味わっていたいと思うような
薄くて柔らかい唇・・・。
それを思えば、酒で酔いが回っている頭は
ふわふわと宙を舞い出した。
それに和也も・・・。
N 「 そうですか・・ なら続き、しますか ? 」
S 「 ああ、当たり前だろうが ・・・ 」
そうなんの感情も持たない瞳で見上げられ、
俺はそのままソファーへ和也を押し倒した。
そう・・・ これは、
互いにおかしくなるほど酒に溺れていた。
ただ・・ 本当にそれだけ、なんだ。