第1章 灰色の蒼空
キャスト達の私物が散乱している
バックヤードの古びた黒いソファー・・。
俺はその上に黙って和也を座らせた。
N 「 あ、あの・・・ 俺、失礼な事言いました、か? 」
ぎこちなくソファーに腰を下ろした和也は
おどおどと、目の前に立つ俺を見上げた。
・・・ 失礼な事なんて何ひとつ言ってない。
寧ろ、嬉しい言葉だよ。
ウチで働きたいなんて。
こいつはホストとして売れていけると
俺が見込んだ。
きっと頭の回転も早いだろう。
・・・ でもなんで、俺はここに連れてきた?
今から和也に何をしたくて、
こんなソファーの上に座らせたんだ?
ああ、俺は相当酔っているんだ。
だって・・・ こんな、こんな風に――。
N 「 あ、の・・翔 さ、っん ・・ んぅ・・んっ 」
俺は戸惑う和也をよそに、和也の細い首に
手を回して、桃色の薄い唇に自分の唇を重ねていた。
俺の身体にも回っている強い酒の匂い・・。
普段なら臭くて堪らないはずの匂い。
だけど、こいつから匂うのは悪くない・・。
そう、もっと味わっていたいと思う程に。
S 「 和也・・・ 口、開けろ 」
N 「 え・・ あ、はい ・・っん ・・あっ 」
おずおずと口を開けた所に自分の舌を
捩じ込んでいく。
この時の俺は、強い刺激を求めていたんだ。
退屈な毎日に飽きた可哀想な俺・・。
毎日好きでもない女の相手をして、
しこたま酒を飲んで・・。
潰れて、吐いて・・・。
そんな毎日に容赦もなく足を踏み入れた
和也の事が・・・ ただ気になっただけだ。