第1章 灰色の蒼空
暫くして、個室の扉が開く音が
俺の背後から聞こえてきた。
その音に振り返ると、げっそりと
顔を真っ青にした和也が現れた。
その顔を見てると、まるで昔の自分を
見ているようで・・・。
なんだか、親心が湧いてしまう。
S 「 和也・・ この仕事、どうだ? 辛いか? 」
N 「 ・・うっ、 はい・・ 本音を言えば、ですね 」
お腹を擦りながら、口をゆすいでいる和也は
目が虚ろだった。
眠気や、酔いで辛いだろうな・・・。
18歳以上から働けるホストクラブは
若いやつなんて沢山いる。
和也は、まだ20歳になったばかりだと聞いた。
酒が飲めるようになったばかりで
こんなに飲んでたら・・ 急性アル中に
なったっておかしくない。
和也はなんて答えるだろうか。
ここで働きたいと・・ ホストになりたいと
言ってくれるだろうか。
S 「 お前はどうしたい? 」
N「・・・・ 俺、は 」
そこで言葉を区切り、一呼吸置いた和也は
ゆっくりと俺の方へ目線を寄越すと、
意志の強い目で俺に答えた。
N 「 俺は ・・・ ここで働きたいです、翔さん達と一緒に 」
S 「 そう、か・・ 凄い嬉しいよ 」
N 「 翔、さん・・・? 」
和也にあんな視線を送られたら・・。
俺の心の中で何かが弾けていた。
俺は和也の左手を掴み、バックヤードへ
誘導していった。
・・・ この時の俺は、相当酔っていたんだと思う。