第1章 灰色の蒼空
N 「 初めまして、ヘルプに付く和也です 」
俺達のいるテーブルにちょこちょこと
やってきた和也は、俺の隣に座る姫に挨拶をした。
『 ええ、すっごくカワイイ〜 もっとこっち来て? 』
姫が和也を自分の隣に座るよう誘導する。
姫の隣にちょこんと座った和也は、なんだかぎこちない。
・・ まあ、それもそうか。
なにせ初めての事だらけだもんな。
このシャンデリアの薄暗い灯りの店内も。
酒を飲んで盛り上がる男女達も。
マイクを使って盛り上がる奴らも。
和也にとっては、未知の世界。
・・・ここは、俺が先輩として手本を示さないと。
俺は姫の肩を優しく抱き寄せて
耳元で聞こえるように囁いた。
S 「 ひ〜め? 和也も良いけど、俺にも構ってよ? 」
『・・きゃっ♡ もちろんだよ、本命は翔くんだからね? 』
S 「 知ってる♡ 」
俺はちらりと和也を見た。
すると、俺がした事の意図を読み取ったのか
軽く頷きながら俺と目を合わせてくれる。
上手く伝わったみたいで良かった・・。
そう思った時、付け回しに和也が呼ばれた。
N 「 それじゃあ姫、俺は失礼します 」
『 うん、またヘルプに付いてね? 』
俺は席を離れた和也の背中を見送った。
新しく付いた席で、初回の客の相手をしてる
和也からはさっきの戸惑いの色は消えていた。