第1章 灰色の蒼空
仕事場に響く声は、まだ名の売れてない
若いプレイヤーの発生練習で騒がしい。
ここは所謂ホストクラブって所で。
俺はここで、そこそこ売れたホストとして働いてる。
まだ主任っていう立場だけど、もうすぐ代表に
なれるような所まで頑張ってきた。
俺もまだ新人の頃はよく声出し・・・
やってたなあ。
なんて、頑張ってる若手を見ながら、準備に取り掛かる。
代表や、主任なんて立場のある俺達は
やらなくてもよくなった声出し。
いつの間にか俺も年取ってんなあ。
自分の髪をセッティングしながら、
そんな事を考える自分に苦笑する。
ワックスを手に取って、髪に塗り付けた所に
内勤の子が声を掛けてきた。
『・・翔さん、今日は体入してる子が来てます』
S 「ああ・・ 今日だったか 」
体入ってのは、体験入店の事。
体入をして、店の幹部に認めてもらえば、
ホストとして働ける。
俺はそいつを人目だけでも見ておこうと
最後に髪を整えて、バックヤードから店内へと移動した。
S 「 体入してる子って、どいつ? 」
俺が声出ししている団体に向けて声を発した。
そしたら、俺より小柄で小さくなりながら
その団体を抜けて出てきた奴がいた。
『・・ え、っと 俺です 』
S 「 ふぅーん、 お前 名前は? 」
『・・ あ、えと 和、也って言います 』
それが和との最初の出逢いだ・・・。