第1章 灰色の蒼空
・・・ 何だか、浮遊感が漂っている。
ゆらゆら、ふらふらと。
ああ、俺も飲み過ぎたわ・・これは。
二日酔い確定だよ ・・ 。
だから頼む、これ以上揺らさないでくれ。
・・ 揺らさないでくれ、だって?
ん ・・ 俺、揺らされてんのか。
S 「 ・・ っ、んんっ ・・ 」
『 ――― 、ん ――― さん 』
浮遊感漂う意識の中で、誰かが
何かを呼び掛けている。
もう夢か現実か、よく分からないが
その声がとても耳に心地いい・・。
ああ、もっと近くで聴きたい。
俺は手探りで、その声がする方へ
手を伸ばして自分の方へ強く引き寄せた。
そうすれば感じる、暖かい温もりと
心地いい誰かの声。
そうだ、俺はこれを求めてたんだ。
この温もりを ・・・。
自分の顔の近くまで、それを引き寄せて
ふわふわして柔らかくて、艶のある部分に手を差し入れた。
それに鼻を埋めれば、鼻から抜ける
とてつもなくいい香り・・・。
この香りの中に閉じ込められていたいと
俺は、不覚にも思ってしまっていた。
だからどうかお願い ・・。
S 「 ・・ もう、少し ・・・ このままで 」
俺はそう願いながら、もう一度深い底へと落ちていった ・・・。