第1章 灰色の蒼空
空っぽの家のインターホンが鳴るまで
数十分弱・・。
べろべろに酔った和也を抱えながら
雅紀が家に来た。
A 「 ああ ・・ ホントに助かります 」
S 「別にお前の為じゃねぇ ・・ 和也だって大事な後輩だからだ」
A 「 うわあ ・・ 俺はそんなに大事じゃないって事っすか 」
そんな事を話しながら、顔を真っ赤に
染めた和也を雅紀から離して、代わりに担ぐ。
・・ こいつ、こんなに軽かったのか。
ふと、そんな事を考えて
慌てて雅紀との会話に自分の頭を切り替えた。
だって気持ち悪ぃだろ、こんなん。
別に誰も他人の体重なんて気にしないし。
ましてや、男のなんて。
A 「 はぁ ・・ 俺、そんなに愛されてなかったんすね 」
S 「 なんでお前は拗ねてんだよ 」
A 「 そりゃあ、だって ・・ 先輩からの信頼なかったんだなって思うじゃないっすか 」
ああ、こいつも相当酔ってんだな、きっと。
これからクラブに行くらしいけど
ホントに大丈夫なんだろうか。
どこか冷えた頭で、雅紀の事を考えた。
しゅんと垂れ下がった眉や目から
本当に大型犬に見えなくもない。
いつしか頭から耳が生えてきそうだ。
S 「 ・・ そんな訳ないだろ 」
A 「 え ・・ っ? 」
S「 俺にとってお前も大事な後輩だよ ・・ これから大きく成長して、いつか俺を抜いてくれるようなホストになるって期待してる 」
A 「 翔さん ・・ 」
普段なら言わないような事を言ってしまった。
でも、言ったことは本心だから。
俺は雅紀の頭を軽く撫でてやった。
A 「 俺、翔さんに惚れそうっす 」
S 「 冗談でも言うんじゃねぇよ、ほらさっさとクラブでも何でも行ってこい 」
A 「 じゃあ、あとは頼みます ・・ 俺にとっても和也は、初めて出来た後輩っすから 」
S 「 ああ 」
足取り軽く出ていく雅紀の後ろ姿を
微笑んで見送った。
・・ さて、問題はここからか。