第1章 灰色の蒼空
何もない、ただ広いだけのこの家。
俺の心が空っぽだって言われてるみたいだ。
けどこれは、俺がこの仕事を
始めてから・・ここまで上り詰めて。
やっと手に入れる事が出来た。
そういう出世の証明でもある。
俺はリビングにひとつ置かれた
大きい黒革のソファに腰掛けた。
携帯をポケットから取り出して
テーブルの上に置く。
そしたらタイミングよく
その携帯が机の上で振動を始めた。
S 「 ああ、もう ・・ なんだよこんな時に 」
色々と整理したくて、一人になりたくて
落ち着きたかったのに。
俺は渋々ながらも携帯を取り、
そのまま耳に当てた。
S 「 どうした、こんな時間に 」
『 翔さぁん ・・ ! 助けてくださいよぉ ・・ 』
S 「 だから、何の要件かちゃんと言えって言ってんだろうが 」
こんな時間に、空気も読まず
俺に電話をかけてきたのは・・。
和也より3ヶ月先に、クラブに
本入した後輩ホストの雅紀。
この大型の犬っころみたいな性格と
抜群のスタイルとルックスで、今人気を集めてきている。
A 『 今日、体入してた和也いるじゃないですか ・・ そいつがいきなり俺ん家来てて 』
S 「 はっ ・・ ? 詳しく説明しろ 」
まずい ・・。
和也が全て話せば、俺は店に居られなくなる。
和也は何をしに、雅紀ん所に行ったんだ・・。