第1章 灰色の蒼空
S 「 ちっ ・・ くそっ 」
俺は今店のトイレで、白の花弁だらけ
だった手を乱暴に洗っていた。
あのあと、俺が和也の上から慌ただしく
退くと和也も下着とジーンズを何もなかった
ような顔をして履き直した。
それから ・・。
N 『 それじゃあ、お先に失礼しますね ・・ 』
そう冷たく言い放って、帰って行った。
本当に今考えると、なんであんな奴を
可愛がってやろうと思ったのか分からない。
もちろん俺だって、あの時は凄く可愛いやつ
なんだとそう思っていた。
思っていたけれど、表情ひとつ変えない
無愛想な奴のどこが良かったんだか・・。
今思えば、変わっていたのは声と肌色くらい。
S 「 ああ、くそっ ・・ 気持ちわりぃな 」
それが和也に対しての言葉なのか
男を慰めた俺自身に対して吐いた言葉かは分からないが。
とにかく、俺はものすごく後悔していた。
少しでも後輩の為を思って配慮してやった
俺が物凄く、馬鹿らしい。
S 「 可愛いと思ったのが間違いだったよ ・・ 」
俺は綺麗に手を洗い終えると、
その場で水気を払いイライラしながら店を出た。