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ハツコイ

第10章 流れ星に願い事3回唱える時って焦るよね


8月25日 土曜日 晴れ

夏休みもそろそろ終わる8月末。
連絡網が回って来た。
学校の屋上で、流星群の観察をしようというのだ。
銀八先生が理事長に頼んでくれて、学校の屋上にZ組で集合する許可が出たらしい。
「銀八先生にしては、なんかロマンチックな思い付きアルナ」
学校に向かう途中、神楽ちゃんが可笑しそうに言った。
「本当だね。雨降らないといいなぁ」
私も笑って、暮れ始めた空を見上げた。
一番星が光る夏の夕空は、薄紫と柔らかなピンク色が混じり、とても綺麗で、私と神楽ちゃんは空を見ながらゆっくり歩いた。

屋上には見事にクラスメイト全員が集まっていた。
夏休み明け前に会えた事がなんだか嬉しくて、きゃあきゃあ騒がしい。
ふと見渡すと、高杉君は1人喧騒から離れ、フェンスに寄りかかっている。
まさか彼がこういうのに来るとは思わなかったと、数人がヒソヒソ話しながら遠巻きに見ている。
まぁ、そうなるよね。
私も昨日の夜、LINEで本人から参加を聞いた時にちょっとびっくりしたもん。
高杉君は皆の視線も声も全部無視して、ただ遠くを見ていた。

完全に日が落ちた。
月は新月。街の灯りは多少あるけれど、かなり暗い。
予報では、そろそろ始まる頃だ。
「あ!今見えたアル!」
神楽ちゃんが叫び、皆慌てて空を見上げる。
すかさず沖田君が言う。
「おいチャイナ、お前その牛乳瓶メガネで本当に見えんのかよ」
「見えたアル。いちいちうるさいネ」
「こらそこ、喧嘩しない」
銀八先生は双眼鏡を覗きながら、気だるそうに咎める。
「先生、今僕も見えました!」
近藤君が空を指差し、また皆で空を見上げる。
1つ、また1つ、星が流れていく。
口々に歓声があがる。
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