第2章 晋助目線
久々の江戸だ。
俺は懐に土産を忍ばせると、表へ出た。
「晋助様、お出かけっすか、お帰りは?」
来島が声をかける。
「さぁな、気が済んだらだ」
我ながら適当な答えだ。気が済む事など、ありはしないのに。
見送る来島を後に、足を進める。
〇〇は俺を待っているだろうか…128日。
決して短くはない。連絡もせずに放ったらかしにするには特に。日にちを数える程に、目に浮かぶ姿は薄れるどころか濃くなった。
ふと、足元に落ちているビラに気づき、なんとはなしに拾い上げる。
江戸には辻斬りが出るらしい。
どうりで、月が明るい良い夜にしては人があまり歩いていない。
〇〇は、危ねえめにあってないだろうか。
俄に早足になり、部屋に着いた。
戸を叩く。1回。2回。返事が無ぇ。
「〇〇ちゃんなら出かけてるよ」
見ると、隣の部屋からパジャマ姿のババァが顔を出している。
「**神社でお百度参りだとさ。辻斬りが出るから危ないって言ってるんだけどねぇ。今日で満願だからとか…」
俺はまだ喋っているババァを無視し、駆け出していた。
嫌な予感がする。
神社に着くと、石段の上に人影が見えた。
2人、いや3人か。雲の切れ間から月の光が差し込む。
男が2人、1人は女に刀を突きつけている。
俺は右目を見開いた。女は…〇〇だ。