第1章 ヒロイン目線
羽織がめくられた。
「怪我してねぇか」
晋助が少し青ざめた顔で私を見ていた。
頷くしか出来ない私。
晋助はため息を吐くと
「このバカ!こんな時間にこんな人気の無い場所に女1人で。襲われて当然だろ!」
と怒鳴った。
私は首をすくめた。
「ごめんなさい。でも、お百度参りを、晋助が、無事に江戸に帰れますようにって…」
晋助は一瞬黙り、またため息を吐き、私をぎゅっと抱きしめた。
「良いか〇〇、1度しか言わねぇからよく聞け。俺が江戸に帰ろうと思うのは、江戸にはお前がいるからだ。お前は、俺の帰る場所なんだ。だから、お前がいなくなったら、俺には帰る場所が無くなるだろ。分かったら、頼むからもう危ねえ事はするな」
私は晋助の肩越しに、こみ上げる涙で滲む月を見ていた。