• テキストサイズ

お百度参り

第1章 ヒロイン目線


「その女から手を離しな」 
え…。 
驚いて開けた目に映ったのは、月明かりを背にした、晋助だ。 
刀を持った男の手を掴み、私を捕まえている男を睨んでいる。 
今まで見た事のない険しい顔に、思わず見とれた。 
「な、なんだお前は」 
刀を持った男は晋助を振り解こうとしたが、晋助はその男を見ないまま、背負投のようにして石段の下に投げ飛ばした。 
男の悲鳴が暗闇に消えていく。 
肩を掴む男の手に力が入り、痛みに私の口からうめき声が漏れた。 
晋助の顔は更に険しくなる。 
「聞こえねぇか。その女から手を離せって言ってんだろ。そいつは、俺のだ」 
男の動悸が背中越しに伝わる。 
男は左手で私の左肩を骨が鳴る程の強さで掴み、右手はいつの間にか持ったのか、小刀を私の喉に当てた。 
晋助の顔が引きつる。 
男の体はカタカタと震える。 
数秒、晋助の睨みに耐えきれなかった男は突然私を突き飛ばした。 
晋助が腕を伸ばしたが間に合わず、私は石段を数段落ち、石灯籠に背中からぶつかった。 
痛くて声も出ない私に、晋助は羽織を投げて被せた。 
「〇〇、汚え血を浴びんな」 
晋助の匂いがする羽織の中で身を固くする私の耳に、男の断末魔の悲鳴が聞こえた。 
/ 15ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp