第1章 ヒロイン目線
暗がりに、男が2人。雲の隙間から除く月明かりが、男達が持つ刀を照らしている。
男の一人が私を見つけ、嫌な笑いを浮かべた「こんな所に、なんの用だい?」
もう一人も私を見る。
「飛んで火に入るなんとやらか」
恐怖で足がすくむ。
あぁ、これは、間違いない。辻斬りだ。
男達が私に腕を延ばす。
「あの…」
「あん?なんだい姉ちゃん」
「お、お百度参りなんです。今日が100日目なんです。だから、こ、殺すなら、その前にお参りをさせて下さい。」
私が言い終わったと同時に、男達は声をあげて嘲笑った。
「おもしれぇ。そんな命乞いはじめて聞いたぜ」
「願い事たって、死んじまうのに。自分の成仏でも願掛けすんのか。まぁ、いいさ。おもしれーからな。気が済むまでやってきな」
私は震える足で、男達の横を通り、石段を登った。賽銭を投げ、手を合わせる。
「神様、今日で私はお百度参り終えます。終えたらすぐ、後ろにいる男達に殺されます。だから、逢えないけど、私の命と引換えで良いから、晋助が無事に江戸に帰れますように。怪我をしないように。お願いします」
頭を下げる。
これで終わりだ。お百度参りも。私の命も。
「終わったかぁ?」
いつの間にかすぐ後ろまで来ていた男の一人が、私の肩を掴み、引き寄せた。
もう一人が刀を私に向ける。
「動くなよ。今切りたいのは帯と着物だからな。」
私は観念して、目をつぶった。その時。