第2章 晋助目線
女を抱き抱えて入った俺を不審そうに見た受付は、一泊には少しばかり過分な金を叩きつけると、黙って鍵を渡した。
部屋に入り、そっと布団に寝かせる。
乱れた髪を手櫛でといてやる。
血は出ていない。頭を打った様子は無さそうだ。目立った怪我も、右足首だけか。
細い足首は赤く腫れ、少し擦りむいている。
備え付けのタオルを塗らし、腫れている部分にあてがった。
〇〇は静かに寝息をたてている。苦しそうな様子は無い。
目尻に少し水滴がついているのを指で拭ってやる。
さっき、俺が怒鳴りつけた時のか。
少し落ち着きてぇ。煙管に火を付け、紫煙をゆっくりと吐く。
「…ん」
〇〇が目を開けた。
「気づいたか」
起き上がろうとするのに手を貸し、宿に運んだ事を伝え、頭打ってないか聞く。
「…うん。背中ぶつけたけど。頭は打ってない。ちょっと、びっくりしたのとか、いろいろで、クラクラしちゃったの」
その言葉に、力が抜けた。
無理もない。来島みたいに血なま臭い戦闘に慣れてる女じゃねぇ。よほど怖かったのだ。
俺も充分肝は冷えたが。
足首の具合を尋ねると、冷たくて気持ちいいと微笑んだ。流れ落ちた髪を耳にかける。
その姿に、体の中心が熱を点けた。