第1章 10月と君と秋風と
女子というのは買い物が好きなんだなと改めて思う。びっくりするくらい広いショッピングモールの中を、まるで自分の家のようにすたすたと歩いていく。俺はゲームセンターの場所しか分からない。(俺と比べ)身長の低い彼女は人混みに紛れてすぐ見えなくなる。背が高かったら遠くにいても分かるのに。それは流石に無理か。
「着いたよ。」
彼女が足を止めたのは、入り口からふわふわしたうさぎ…みたいなヤツのぬいぐるみが置いてある、いかにもなファンシーショップだった。なんか甘い匂いがしそうアレ。
佐久間さんはカラフルな香水のような瓶の前で少し前かがみになった。じっとそれを見つめている。もしかして欲しいのかな?
「さ、まずはいろいろ見てみよっか。 何かいいのが見つかるかもしれないし。」
彼女はそう言って、俺を店の中に手招いた。