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10月と君と秋風と

第1章 10月と君と秋風と


学校に行く時より自転車を漕ぐ足が軽いなんて当たり前だ。そもそも部活のバッグが要らない。
10月に入ったとはいえ日の光は強い。自分としてはまだまだ半袖でいたい。ショッピングモールは冷房が効いているからパーカーを羽織って行きなさいと母親に言われたので持ってきはしたが。
駅前の交差点は休日らしい賑わいを見せていて子供連れも多い。信号待ちをしている間は佐久間さんの姿は見当たらなかった。駐輪場に自転車を止め、構内に入って時刻表を見る。電車通学というものをしたことがない自分にとって、時刻表はさながら暗号のようですらある。佐久間さんが見方を教えてくれたが、やっぱりいまいち分からない。
「中地君?」
小さな声がして振り返る。待ち合わせをしていた佐久間さんだった。手にはカバーのかかった文庫本が握られている。恐らく待っている間読んでいたのだろう。
普段は学校でしか会うことがないので、制服か体操服くらいしか見たことがなかったが、やはり私服となると印象が変わって見える。肌寒いのかカーディガンを羽織っていた。
そのことについてふれると、
「それは、中地君の方がおかしいんだよ。」
と、笑われてしまった。
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