第7章 異変
ある晩、信玄と謙信は酒をかわしていた。
謙信「・・・・・・」
信玄「どうした?今日はいつにもまして不機嫌だな・・・
あの子と何かあったのか?」
謙信「・・・なぜ決めつける?」
信玄「お前が最近機嫌悪い時は、
大体あの子がらみだからなぁ・・・」
信玄は苦笑いしながら答える。
謙信「・・・この前、あの娘の背中から羽が生えていた」
謙信はその言葉に嫌そうな顔を一瞬したが、
やがて深刻そうな顔をして、信玄に告げる。
信玄「へえ・・・まあ夢魔というなら、
羽くらいあってもおかしくはないだろう?」
謙信「あの娘がどこかに、
消えてしまうような気がするのだ・・・」
信玄「まあお前があの子と交われば、
お前は用済みでそうなるだろうな」
謙信「そうだな・・・いっそ交わらなければ、
あれは一生俺のものだとそう思う時さえある。
だがな・・・時折嫌な予感がするのだ・・・
交わろうが交わるまいがあの娘は、
いずれ俺のもとから消える気なのではないかと」
信玄「あんなに嫌がっていたのに、
どういう風の吹き回しだ?」
信玄は愉快そうに、謙信に聞く。
謙信「・・・勘違いをするな。
俺はただあの娘が気に入らんだけだ」
謙信は嫌そうな顔をして、信玄に答える。
気に入らないだけ、それ以上の気持ちなどないと・・・