第7章 異変
ある別の日、
賭けの期限まであと一週間を過ぎたころだった。
幸村「今度はお前なんだよ・・・それ」
幸村は再び葵の異変に気付く。
葵の背中に羽が生えていたのだ。
葵「あぁ・・・ごめん羽がね・・・」
幸村「今度は羽かよ」
よく背中部分の布突き破らずに羽生えてんなと、
幸村はそんなことを思ったが、
葵のひどく困っている顔を見て、
いうのをやめた。
葵「邪魔にならないようにするからごめん」
幸村「いいけどよ・・・どうしたんだそれ」
葵「分からない・・・なんかこのところ変で・・・」
幸村「大丈夫かよ・・・」
佐助「にしても変わった羽だな」
佐助がふいに現れる。
幸村「うわ・・・佐助いつの間に・・・
たしかにそうだな・・・
左右で形がちげえなんて・・・」
佐助と幸村の視線の先には、
不揃いな葵の羽がうつった。
片方は蝙蝠のような羽。
もう片方はまるで白鳥を思わせるような純白の羽だった。
佐助「そうしてみるとまるで、
夢魔じゃなくて天使のようだね」
葵「・・・っ」
葵は天使というその言葉に過剰な反応を見せた。
まるで触れないでと言わんばかりに。
佐助「・・・ごめん。
なんか嫌な思いをさせたみたいだね・・・
でも気を付けて・・・
謙信様に見られる前に、
隠せられるなら隠した方がいい」
謙信はこれを良く思わないだろう・・・
そう思った佐助は、葵にそう告げた。
葵「そ・・・そうだね」
謙信「そうだな・・・まあもう遅いが」
葵「謙信様・・・えっと・・・これは・・・」
謙信「くれぐれも羽を散らかして、
廊下を汚したら許さんぞ」
謙信は一言それだけをつげると、
葵のそばを通り過ぎた。
葵「は・・・はい」