第6章 勝負の始まり
香炉が届けられ、信玄たちが退室した。
葵は香炉を使おうとした。
・・・使い方をろくにしらないのにも関わらず・・・
そんな時だった。
謙信「なんだこの煙は」
葵「謙信様!?」
煙に涙目になった葵と、
煙のにおいに顔をしかめた謙信の目が合った。
謙信「・・・何をしている?」
葵「香を・・・」
謙信「香か・・・・・・火事かと思ったぞ・・・」
あきれながら謙信はそう答える。
葵「使い方違います?」
謙信「・・・使い方というか、
そんなにたくものではない」
謙信は香炉の火をとめ、煙を小さくさせた。
謙信「煙はこのぐらいでよい」
葵「そんだけでいいんですね」
謙信「あとは着物を上にのせたりして、
香のにおいを着物に・・・
ところでこの香どうした?」
葵「え?謙信様がにおいを気にしていると聞いて」
謙信「たしかにお前のにおいは気になるが・・・
香をたけとまで言った覚えはないぞ」
葵「そうなんですか?
佐助から聞いて、
信玄様たちが選んで、
いただいたものなんですが・・・」
信玄・・・その名前が出た瞬間、
謙信の整った眉が歪む。