第13章 口直し ※R-18
酒を飲み終え、それぞれ部屋に戻ることにした謙信は、
褥の中で眠りにつく葵を見ていた。
謙信がいない間にまた悪夢でも見たのだろうか?
瞼に閉ざされた目に涙がにじんでいる。
謙信は、そんな彼女の頭を再びなでてやりながら、
ふと房事の最中の葵の言葉を思い出していた。
謙信「お守りか・・・
そんなほかのやつも、
やっているかもしれんことに、
何の意味がある」
毛一本まで葵を独占したいと思う気持ちはある。
だがそれをそういう迷信に利用したいか、
といえばまあ否だろう。
そんなものに頼らずとも、
自分は軍神と呼ばれるほど強いのだ。
それにそういう噂としてなるくらい、
誰かがやっているようなことをして、
自分の心は決して満たされはしないだろう。
謙信「それにお守りというなら、
こちらの方が好ましい」
謙信はそういうと褥に落ちていた一枚の白い羽を手に取る。
自分以外は知らない特別なものだ。
謙信はその羽に口づけを落とすと、
そっと机の引き出しの中にしまった。
そして謙信はそのまま褥の中に入り込み、
葵の隣に静かに横になる。
葵からは「んんっ」という声がしたが、
すぐに何事もなかったように寝息を立て始める。
謙信は葵の身体を腕に抱くと自分も眠りについた。
そのあと二人はその日悪夢を見ることはなかった。