第12章 波乱? ※注意
葵の話を、謙信は黙って聞いていた。
そして話し終わった葵の身体を、
静かに抱きしめていた。
葵の話は実話で・・・
彼女の言う残された子とは彼女自身なのだろうと・・・
謙信はすぐに察した。
謙信「(ああ・・・・・・
葵が私なんかと自分を卑下するのも・・・
誕生日を知らぬのも・・・
これのせいなのだな・・・
あれほど俺にこだわりながら諦観していたのは、
純粋に死を悟っていたからだけではない。
欲しながら・・・否定されて続けて・・・
それでも誰かにずっと見てほしい・・・
とそう思って・・・
この娘はずっと、
一人で耐えていたのだ・・・・・・
俺がどれほど愛や欲を注いでも・・・
満たされることはないほどの傷が、
今も、この娘を蝕んでいる・・・)」
謙信は葵の身体を抱きしめ続けた。
葵も離さないで、
一人にしないでと懇願するかのように、
でも触れていいのかと探るように、
謙信の腕を恐る恐る握る。
二人はしばし静かに抱き合っていた。