ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第131章 余裕な彼と精一杯の私
私を単細胞の馬鹿だと言う人は世の中に沢山いるだろう
しかし私の中で彼の言葉はそれだけ影響力があるのだと染々実感する今
キスをしないという選択肢は薄く遠退いていた
彼に与えられたミッションが私の中で絶対的な効力を持った瞬間である…………
しかしだからと言って直ぐに行動する根性は無く………只遠巻きに彼を凝視する
美しく整った顔は本当に中性的で
長い睫毛に大きな瞳
すらりと通った鼻筋
薄い唇
本当に生きているのか疑わしい作り物の様な彼にキスをする………
考えただけで顔が爆発しそうに熱くなって私はまんじりとも動けずに立ち尽くしたまま
溢れては止めどない想いが余計に恥じらいを生み出し、脈は上がるばかりだ
新聞に視線を流す彼の横顔は完全に気を抜き、その表情に余裕を漂わせていて私達の温度差がひしひしと伝わって
恥じらっている今この態度すらも恥ずかしいものなのでは……
なんてどうにも行動に移せず彼を見詰めたまま時間は遂に5分前と成ってしまった
脳内妄想を繰り返していた事でゆでダコの様に染まった身体
ふぅと息を吐いた彼は新聞を閉じると私を真っ直ぐに鋭い視線で射抜き、途端に跳ねる肩
ギシリと軋むソファーのスプリングにすら敏感に成って
「ほら、時間が過ぎちゃうよ?」
緩く両手を広げた彼は余裕を含んだ笑みを浮かべた
まるで"どこからでもどうぞ"とばかりの仕草に盛大に鳴り響く心音
私は真っ赤な顔をそのままに一歩を踏み出していた