第23章 彼の世界の彼

「……私、イルミさんに会いたくて……会いに来ました！！」


部屋着のズボンをぎゅっと握って声を上げる



「…………沙夜子は本当に馬鹿だね」


柔らかな朝日に照らされた彼は優しく微笑みを浮かべてあの日々の中で何度も聞いた台詞を口にした


……………会いたかったずっと


1年半の間彼を忘れる事は無かった


途方も無く長い時間を経て私は愛しくて仕方がない彼に会えたのだ……


胸にじわりじわりと彼の存在が染みて行く
温かくて柔らかくて幸福だけが身体中に広がって行く


「私……ずっと………ずっとイルミさんを探してた……会いたかった……」


私は気が付けばポロポロと涙を流していた



止めどなく溢れる涙に視界の彼が揺れて


「俺もだよ。ずっと会いたかった」


彼に抱き締められていると気付いたのは耳元に彼の声が響いてからだった

ぎゅっと腕を回せば彼は黙って抱き締め返してくれて逞しい腕の中に閉じ込められた私は暫く子供の様に泣いた




__________"



気が付けばヒソカさんは居なくて開け放たれた窓、ベッドザイドのチェストの上にはハートのAのカードが落ちていた

そしてそのカードを私の手から取り上げた彼は真顔でカードをビリビリに破ってゴミ箱に捨てた



「ちょっと！！！人の物ですよ！！！」


私の言葉に不満気に眉をしかめた彼は


「ヒソカとトランプで遊ぶ相手なんて誰も居やしないから困りはしないよ」


なんて酷い暴言を吐いた

ぶっきらぼうで飄々とした物言いが懐かしくて只彼を眺めていると


「ここには長居出来ない。移動するから準備して。」


チラリと窓の外を確認した彼はやんわり私を急かした