ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第130章 スポーツの船
彼はと言えば全く興味が無いのか講習中も聞いているのかいないのかよく解らない無表情だったが別に嫌そうという訳では無いので大丈夫だろう
ほんの3m程の初心者用
簡単だろうと軽い気持ちで始めたが
しかし、一歩一歩考えながら上を目指し全身を動かすのは思いの外疲れる事で
頂上にタッチした時には何とも言えない達成感に包まれていた
指先から爪先、そして腕や脚、腹筋まで全ての筋肉が動いているのを感じるのは日頃室内で過ごす私には随分と久々な事で
慎重に降り立ったフロアを振り返りながら彼に手を振った私は随分と清々しい気持ちだった
…………私自身思ってもいなかった大発見………!
それはこの歳で新たに趣味にしたい程惹かれる事に出会えた事だった
幸いにも船で旅をする最中は何度だって挑戦出来るしとことん向き合い楽しむ事が出来る!
そう思えば自然に溢れた笑み
心地好く滲んだ汗を拭いながら彼に駆け寄る
「イルミさん!これめっちゃ楽しいです!」
「ふーん」
声色こそ興味無さ気ながら私をまるで保護者の様に見守り穏やかな表情を浮かべた彼は
「次行っておいでよ。」
優しく背中を押してくれて
私は満面の笑みで手を振りながら中級1,2,3と順に挑戦を続けた
やはり鈍った身体には色々とキツくて上級者用に挑戦する体力は無くなっていたけれど
上がる息をそのままに彼の座るベンチで水を一気に飲み込む
「はぁっ!……もー凄い楽しいです!私こんなに楽しいと思ってなかった!」
「へー。」
久しぶりに夢中に成れる事と出会い高揚する気持ち
私はそのままの気持ちを言葉に出し続け、彼は静かに相槌を打ち続けてくれていたのだが
ふと向けた視界に男性が上級者用コースを登っている姿を発見し私の思考は一瞬にして彼へと向けられた
(…………イルミさんが登ってる姿………カッコいいんじゃない……?)
そう脳裏に過ってから口に出すのは驚く程早かった
「楽しいですよ!せっかくですからイルミさんも一回挑戦してください!上級者用!上級者用でお願いします!!!」
捲し立てる様に言った私だが
「……別に良いけど。」
彼は案外すんなりと小さな声を紡いで軽く伸びをした後にベンチから立ち上がった