ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第130章 スポーツの船
何度も感じたこのデジャヴに何が起きているのか大体の予測を立てる事が出来ていた
………………のだが
「沙夜子の足元。」
間の抜けた声の通り視線を落とした先
頑丈なゴム性であろう床に黒い焦げ跡を残してガッツリめり込んだボールを発見して私はそっとラケットを手放した
背筋に流れる汗は決してスポーツによるものでは無く生命の危機を感じた本能が流した冷や汗だ
まさか人生の中でテニスボールに命を脅かされるとは思っていなかったが
そう言えば彼は豆まきの豆を壁にめり込ませた人物だった……
もしかしたら彼はカップを持ったりパソコンを操作したり、生活の中での日常的な力のコントロールは完璧に出来てもスポーツや普段接っさない事柄に関しての制御が苦手なのかもしれない
そう考えると彼からしてみれば「あ、ちょっとやり過ぎた?」くらいの事なのだろうけれど……
このまま続行するには危う過ぎる状況に少し注意だけしておく事にした
もしもあのボールが私の足に直撃していたら……私の足は飴細工よりも簡単に粉砕骨折している………
もしかしたら足ごと粉々に消し飛んでしまうかもしれないと思えばゾッと血の気が引いて行く
………注意…………
私は自身の身を守る為に直接的で解りやすい言葉を彼に伝える事にした
「イルミさん」
「何。」
「私死んじゃいます」
「……………。」
「嫌ですよ命懸けのテニスとか」
「……ごめん。」