ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第130章 スポーツの船
04月02日
10:46
私達はアクティビティエリアへと向かっている
やはり彼は私の希望を叶えようとしてくれているのか「体動かして遊びましょう!」と言う私の提案にすんなり腰を上げてくれて、素直な嬉しさにお礼を伝えたのだが
今の私はニヤニヤしている顔を隠さずに彼へ向けている
初日から客室に備えられていた館内スポーツウェアは黒一色のシンプルなもので……それは全然良いのだが
男女共通のスポーツウェアだった……………
……………つまりペアルックなのである……………!!
別にペアルックをしてみたいなんて願望を抱いた事は無かったにせよ、その衝撃の事実に気付いた以上真顔を保つのは無理だった
彼は私服でペアルックなんて絶対にしてくれないタイプだろう事は容易に想像出来るし
今私は滅茶苦茶貴重な体験をしているのでは?なんてアクティビティとは無関係な所に私の興奮ポイントはあったのだ
そんな私の様子に気付いた彼は怪訝な表情を浮かべた後から人一人分の距離を保って並び歩いている
何度か距離を詰めてみたが彼はやはり私と距離を取っていて……
他人のふりがしたくなる様なおぞましい顔をしているのかと少々凹んだが何となく慣れにも近い感覚から俄然喜びの方が勝っている
慣れとは良くも悪くも人を強くするらしい
「んふふふ………」
「何……。」
しかし彼は私が何に興奮し歓喜しているのか全く理解出来ていないらしく然り気無く距離を置きながらも先程から其の真意を探ろうとしている
大きな瞳は静かに観察を続け、眉間に寄った皺
彼から言わせれば私は随分と不思議な人物らしいがアクティビティにはしゃいでいる訳では無いのだと察する辺りやはり流石だ
大好きな彼とペアルック…………
めちゃくちゃラブラブっぽい……
それだけの理由で私は馬鹿みたいに浮かれに浮かれているのだが待っていたエレベーターの扉が開いたと同時に私の笑顔は綺麗に消えた
何の変哲も無い黒のスポーツウェア
それでも彼とお揃いだという些細な事で満たされていた私の幸福指数はあっという間に砂漠の様に枯渇した
エレベーター内には私と麗しの彼、そして小太りの中年男性………
エレベーターにたまたま乗り合わせたこの男性は私達と同じ黒いスポーツウェアを着ていた