ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第129章 新妻の意識
どれだけ沈黙が過ぎたのかシャンパンを持って再びテーブルを訪れたウェイターに「今はさがって。」なんて言う彼はどうやら私が話す迄食事を進める気が無いのだと解った
口も付けずにそのままの前菜は彼とお揃い
このまま黙っていても時間だけが過ぎて行く
纏まらない気持ちをそのままに顔を上げれば彼は普段と変わらず飄々とした態度のまま静かに私を待っていてくれた
まるで不機嫌な素振りも見せず向けられる真っ直ぐな瞳
淡白で無機質な表情は私の肩の力を抜いて行く様で
「………あの、今更なんですけど……」
なんて前置きに彼は眼差しだけで先を促した
「イルミさんカッコいいじゃないですか……多分って言うか絶対モテるし私じゃなくても色んな女性がイルミさんのお嫁さんになりたがると思うんです……」
「…………。」
「それこそ同業者の方ならお家に隠す事も無いやろうし……世界を越える危険も無いし………なんで私を選んでくれたんですか………?イルミさんは私で後悔無いですか………?」
小さく紡いだ言葉に彼は僅かに眉をしかめると深い溜め息を付いた後に冷たさを含む声を響かせた
「実際、沙夜子じゃなくても家の後ろ楯欲しさに立候補する馬鹿は五万といるだろうけど……だったら何なの?俺がどうとか言いながら俺には沙夜子が後悔している様に聞こえるんだけど。」
「そんな事っ………!!!違います!!!」
思わず荒げた声は事実を叫び
只不安だった気持ちが巧く届けられていない事を歯痒く思う
だけど彼の反応は当然だ……
先程迄馬鹿みたいに浮かれていたのに突然何を言い出すのだろうと気分を害しただろう
突然の起伏の変化に自身でも驚きながらも私は必死に気持ちを言葉にした
「私は……私はイルミさん以外に考えられないです!……イルミさんを選んで後悔なんかありません!……でもイルミさんは……」