第128章 仕返しと浮かれた船

…………………そうか…………確かに今日はエイプリルフールだ…………


…………しかし…………しかし何て悪質な嘘だろう……………


ここ何日も私の浮かれた様子を一番近くで見ていた彼なら私の示す反応くらい予想出来た筈なのに…………


…………………仕返し………………



彼は私の世界で私の嘘に騙された


ポーカーフェイスには変わり無いけれど妊娠したという嘘に認知するだなんて言った彼は相当動揺していたのだろうと今に成って思う


その仕返しを二年越しで受けるなんて思っていなかったけど、彼があの日々から垣間見せていた子供っぽい部分と謎の執念深さを感じる

そう言えば彼は私のちょっとしたイタズラや行動にきっちりと仕返しをするタイプだった……



「じゃあ旅行行けるんですね……？」


おずおず見上げた先コクリと頷いた彼は心無し楽しそうに瞳を細めると


「まぁ明日じゃなくて今からだけど」


淡々と驚く言葉を紡いだ


「………えぇっ！？！？」


先程から私は彼に驚かされてばかりで軽く疲労さえ感じているけれど

明日では無く今日だなんて嬉しさと同時に何から手を付ければ良いのか解らなく成った


幸いにもメイクや髪型は完璧だが……なんてまごつく私に



「え……えっと、「とにかく沙夜子の身支度が整い次第出発するから。」



淡々と言うと彼は明日着て行こうとハンガーに掛けていた洋服を手渡して洗面所から出て行った



「…………今から…………」


状況理解が追い付かず暫く立ち尽くした私だが漸く追い付いた感情に上機嫌で身支度を整えたのだった