ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第127章 他愛ないヒトコマ
3月15日
彼はあの日、翌朝迄ぐっすりと眠り続けて
「じゃあ続きヤろっか」
なんて寝起き早々に間の抜けた声で言った途端に淫靡に瞳を細めた
途方も無く幸せで愛に溢れた時間
何もかも忘れてめくるめく彼の波に溺れる時は、今迄に無く甘く激しく
彼は私を幾度と求めた
彼と素肌を合わせる快楽に必死にしがみ付いた私はその日から翌日まで寝込む羽目になり
気が付けば身体には恐ろしい数の紅色の痕と歯形が残されていた
「…………痛い」
身体中が痛い
その時は只夢中で羞恥すら忘れていたけれど、バスルームの全身鏡に映った肌は馬鹿みたいな斑点模様と病的な歯形を残していて私の顔色は赤いのか青いのかわからない
幸いまだまだ冬の寒さを失ってはいない春先に薄着をする事は無いので誰に見られる訳でも無いけれど、首筋に関しては外出予定も無いのでそのままにしている
しかしながら身体中が鈍く痛くて苦痛だ
何かに触れるとじわりと痛くてどうにも地味に体力を消耗する
私はそんな身体を擦りながら彼の事をじっと凝視していた
彼はあんなに荒々しく過激に私を抱いたくせに何事も無かったかの様に普段を取り戻し、なに食わぬ顔で優雅に読書をしている
さすがに私が寝込んでいた時は「少しやり過ぎたね」なんて一瞬気まずそうな表情を浮かべたけれどそれもその一回だけで
多分にあの日の余韻を引き摺る私は鈍い痛みにすら彼の愛を思い出すのに……なんて
要するに私はそんな自分に羞恥を煽られ彼を見れば照れてしまうのに彼は通常運転でいる事に少々不満を感じているのだ
思い出しては熱くなる頬が何とも恨めしい
そしてそんな私に向けられる涼しい瞳が何とも………
彼は不意に思い出したり照れたりはしないのだろうか
私の様に余韻に浸るなんて全く無さそうな端正な顔にはいつもの無表情
何事も無かった様な態度の彼の隣で私ばかりが馬鹿みたいで恥ずかしい……なんて思いながらも色違いのマグカップを傾けていると
長い指でページを捲った彼は気だるげな瞳を私に向けた
「さっきから何。」
なんて言いながら真っ直ぐに注がれる視線