ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第126章 彼と彼女が取り戻した日常
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久々に戻った部屋は銃弾で撃ち抜かれた窓の在るホテルとは違っていた
観光で栄えた自然都市という土地は同じでも一際大きな建物はまるでベルサイユ宮殿を思わせる外観で
本来宿泊していた山沿いでは無く大きな運河が流れている観光地の中心に位地していた
その中でも最上階の中心に広大なスペースを設けたペントハウス
私はおずおずと足を踏み入れて察する様に理解した
……………ここは彼が仕事用として使用しているホテルだ…………
何故そう思ったのか
ホテル故に生活感が無いのは当然だが、広いテーブルにストックされた針や充電されたノートパソコン
開け放たれたままのクローゼットには彼がプライベートで身に付けるとは思えない鮮やかな色が見えたからで
私は何処へ視線を置くべきか戸惑っていた
………彼は私を極力家業へと近付けない絶対的な線を引いていた
故に私は一度も彼の仕事に関わる領域に足を踏み入れた事が無かったのだ
私には理解も及ばない色々な理由があるのだろうけど……なんて身を固くしたまま突っ立っている私に肩越しの視線を向けた彼は軽く息を吐くと
「違う部屋を手配する時間が無かったから今日はここで我慢して」
間の抜けた淡白な声色を響かせた
当然の様にあのホテルに戻るものと思っていたけれど身がバレている場所に再び宿泊するなんてリスクを彼が犯す筈が無い
ニュアンス的に一日限りの宿泊らしいので特別気にする事も無いだろうけど、深く彼のテリトリーに足を踏み入れた様で少し嬉しく成る
ぼんやり突っ立っていても何もする事は無いしリュックを床に下ろして親方のケージを配置していると
「早くシャワー行って。」
彼は単調に言いながらいつの間にか持っていたガウンを私に差し出した
おずおず伺えば彼は無言のまま有無を言わさぬ圧を放っているし先にコーヒーブレイク……なんて言えば物凄い目力で睨まれるに違いない
船と車での移動は数時間にも及び、体力の無い私は結構くたびれてしまっていたけれど逆らう選択肢は無く素直にシャワーを浴びた