ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第126章 彼と彼女が取り戻した日常
ぐんと迫った距離で薄く開いた双眼は私を観察したままに熱い唇を重ねた
何か話さなければと巡っていた思考は嘘の様に停止して柔らかな温もりに触れればドキドキと高鳴る鼓動が全身を巡る
たったの数秒
触れ合うだけのキスをした彼は
「もう下らない事は話さないでね。」
と脳を支配する様に鼓膜に囁きを残して姿勢を正した
途端に全てが見間違いかと思わせる淡白さを漂わせる彼の目まぐるしさに付いて行けず熱く染まる頬
口封じとばかりに私の唇に軽く触れた彼があまりにも誘惑的に支配欲を見せるので返事もままならず
鬱陶しそうに前髪をかき上げて覗く普段と変わらぬ横顔は先程まで異質さを滲ませていた同一人物とは思えない程に潔癖でクラクラと目眩を覚えた
……彼の強い固執は猟奇的な愛故に……
彼の歪さすらもこんなに愛しいだなんて私は最早正常な人間では無いのかもしれないけれど
たった一回、触れるだけのキスで私は身も心も会えなかった時間さえも全てが満たされた気持ちに成った
ぼんやりと彼を見詰めて本当に無事に再会出来た事を噛み締める
彼は命を摘み取る暗殺者
常に危険が付いて回るのだ
…………私はこの先再び彼以外の誰かに命を保護される事があるのだろうか
きっと問い掛けてみても答えは無いのだろう
私が保護される事態は二度と起きなくて良いと思っているけれど、また保護される事があるならあの島が良いな……なんて
実は彼に見付かる前に仕舞っていたハートのクイーンを思い出す
彼に見付かってしまえば大変な事に成るだろうけど私には聞きたい事があるのだ
トランプのカードが足りなく成って困る事は無いのかと………
再び視線を彼に向ければ彼は尚も不快感を隠さず
「……あとさ、凄い臭いよ。悪趣味な変態の臭いがする。帰ったらシャワー浴びて洋服は全て処分してね、これは命令だから。」
「あ………えっと……ベッド借りてたか「うるさい。」
彼はやはり滅茶苦茶な不機嫌だった