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ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編

第126章 彼と彼女が取り戻した日常







「わ、私実は操り人形出来るんですよ!」


なんて引き吊った笑顔で人形にお辞儀をさせながら敢えてヒソカさんに教えて貰ったとは言わなかった

…………正確には恐ろしくて言えなかった………


そんな時




ヒュンと空を切る音


いつの間にか立ち上がっていた彼の姿

そして腕に響いた衝撃に絶句する




目の前の人形が現状を把握する前に崩れて行く様を私は只見開いた両目で見ていた


小さな音と共に片足を甲板に下ろした彼の様子から高速の一蹴りが見舞われたのだろうと察する事しか出来ず

只の木片へと形を変えた人形がまるで悠長に海へ放り出されて行く様子を唖然と見送っていると



「そんな物は沙夜子に必要無い。」



背筋を凍らせる様な無機質な声が低く放たれ

驚愕に固まる私の手に残った糸受けを悠々と取り上げた彼は顔色のひとつも変えずにグシャリと一握りで粉砕してしまった



……………恐るべし腕力だ……………なんて現実離れした出来事に放心しながらも恐る恐る目を合わせると
猟奇に染まった真っ黒な瞳がじっと私を見詰めていて


「沙夜子」


只名を呼ばれただけなのに酷く危な気な闇を思わせる声


「…………イルミさん」


ゆっくりと隣に腰を下ろした彼は無機質な表情とはまるで掛け離れた歪さを覗かせる



……本当はあの人形は記念に取って置きたかった思い出なのだ、と言いたかった


だけど彼の真っ黒な瞳に見詰められてしまえば口に出せる筈も無く



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