第125章 ハートのクイーン

船から真っ直ぐに隠れ家を目指していた彼に向かって全力で走る


会いたかった


ずっと会いたかった


大好きな彼だ


ずっと待っていた


もう会えないかもしれないと思った


彼を想わない日なんて一度も無かった



大きく印象的な瞳を眩しさに細めながら真っ直ぐな視線は私を射抜いてふっと気だるげな笑みを浮かべた彼は余裕たっぷりに両手を広げた


涙が頬を流れ落ちて行く


私は思い切り彼に抱き着いた



広く頼もしい胸板に頬を寄せれば胸を高鳴らせる彼の香りが鼻を擽って馬鹿みたいに泣きながら見上げた先

彼は伏し目がちに私を見下ろし形の良い唇を開いた



「お待たせ」



ぶっきらぼうで単調な声


ずっとずっと聞きたかった愛しい彼の声


彼の全てが私を包んで愛しさと喜びに溶けてしまいそうに成る


抱き着いて離れない私の髪を撫でてあやす大きな手に余計に胸が締め付けられて私は暫く泣き続けた



「イルミさん"大好きです……私ずっと待ってましだ……っ」



「うん。」