ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第123章 湯煙とおとぎの世界
3月10日
私は鼻歌を歌いながら島を一人歩いていた
と言うのも、ヒソカさんが買い出しで町へ出ると私はこの何も無い島で本当に一人ぼっちになる
私は必然的に彼への想いを溢れさせてひっそりと涙ぐんでいたのだが、そこでふと思い出した洞窟温泉の存在
このまま陰鬱な気分でふて寝しているより何かをしている方がずっと良いだろうとダイニングテーブルの上にメッセージを残して隠れ家を出た
洞窟温泉迄の道のりは片道約15分
洞窟はあの日と変わらずポッカリ開いた其処から闇を覗かせていた
ホラーを苦手とする私には想像通り恐怖心を煽る場所だったけれど、つい数日前に訪れた事で危険は無く素晴らしい景色が待っていると思う事が出来た
昼間は汗ばむ常夏の島
しかし洞窟内はひやりと冷えた空気を漂わせ半袖だと長時間の滞在は出来ないだろうと思わせる
そこに来ての温泉
この気温なら長湯も出来て実に快適だろう
私は手探りで慎重に洞窟内を進んで湿気と湯煙漂うエリア迄進んだ
薄暗い岩場を暫くさ迷い、湿気に濡れていない岩を脱衣場所に決める
私の手には替えの下着が入った袋とタオル
其れ等を置いて衣服を脱ぎ払いながら私の胸は妙な高鳴りを覚えていた
全く人の手の入っていない温泉
当然脱衣室もシャワーも無く何だか不思議な気分に成りながらも貴重な経験に胸はワクワクと騒いだ
全ての衣服を岩肌に置いて私に残された装備はビーチサンダル
ゴツゴツとした足場を危惧しての装備だったが実に正解だった
ビーチサンダルが無ければ鋭利な足つぼ地獄に私は温泉まで到達出来なかっただろう
なんて思いながらも硫黄特有の香り漂う温泉に恐る恐る足を浸ける
命の恩人が安全を保証していたので本当に安全なのだろうけど暗がりでは水位の把握が出来ず馬鹿みたいにそろそろと足を浸していたのだが思いの外浅かった
………足首よりは深く膝下よりは浅い
途端に温もりを覚えた肌がぶるりと震えて肌寒さを訴え始めた
寒い寒いと一人呟きながら肩を抱き寄せ温泉内を進んで行く
しっとりとした肌触りの温泉は心地好く肌を滑って全身浸かれたならさぞ気持ちが良いだろうと思いながらも私は絶景スポットを目指していた